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成長投資と構造改革が生み出す効果で
2025年3月期 社長インタビュー
収益力を高め、飛躍への足場を築きます。
鈴木:
円安効果も寄与して各市場で増収し、過去最高の売上高ながら、減益を余儀なくされました。
この1年間は、中国において同国自動車メーカーの生産・販売が堅調さを示した⼀方で、前期後半よりEVの成長鈍化が続く中、日本・欧州・米国における市場低迷を受けて世界自動車⽣産台数が前期比微減となるなど、自動車産業の市場環境は低調に推移しました。
当社では、前期に新ERPシステムへの移行に備えた売上の前倒し計上があり、当期実績にその影響が生じたものの、為替の円安効果が寄与したことなどから、モビリティ市場、コンシューマー市場、インダストリアル市場の全事業セグメントで増収を遂げました。しかし利益面は、新ERPシステムおよび秋田新工場の立ち上げにかかる費用の増加に加え、原材料費や人件費、輸送費などの高騰の影響を受けました。原価低減施策により減益幅を抑えましたが、利益の減少を余儀なくされました。
以上により2025年3月期の連結業績は、売上高は563億32百万円(前期比1.9%増)を確保して過去最高を更新し、営業利益は53億7百万円(同10.6%減)、経常利益は55億4百万円(同23.4%減)となりました。構造改革費用19億91百万円を特別損失に計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純利益は、26億62百万円(同52.4%減)となりました。営業利益率は、前期の10.7%から9.4%に低下しましたが、第2四半期以降は10%超で推移しました。営業キャッシュ・フローは120億43百万円、同マージン率は21.4%となり「キャッシュを生む力」を高水準でキープしています。
営業状況を市場別に振り返ると、モビリティ市場では、中国におけるEV販売の好調を受け、パワートレイン分野がBMS(バッテリー管理システム)用の車載Two(ワイヤーtoボード)コネクタや三次元可動Botコネクタ「Z-Move」を中心に販売を伸ばしました。インフォテインメント分野も堅調に推移し、特に高速伝送対応可動BtoBコネクタは、売上が前期の約3倍に拡大しましたが、センサー分野は、搭載車種の台数減少と⼀部機器における構造変化を背景に、レーダー向けが減少したことから、前期実績を下回りました。
コンシューマー市場では、プリンター向けおよびデジタルカメラ向けを中心に各種コネクタの販売が増加し、増収を牽引しましたが、ゲーム機向けの販売については、下振れ傾向が継続しました。
インダストリアル市場ではFA関連機器向けの販売不振が継続しましたが、近年参入・開拓を進めてきたエネルギーマネジメント分野の販売増加でカバーし、前期比微増収となりました。
鈴木:
原価構造改善を追求。2026年3月期は各市場のビジネス拡大と経営基盤強化に注力します。
当社は、2025年2月より全社を挙げた構造改革を開始し、原価構造の改善を図るべく、⽣産拠点の役割見直しによる生産効率の向上と、新ERPシステムを活用した業務効率の向上に取り組んでいます。2025年3月期は、前述の通り構造改革費用19億91百万円を特別損失に計上し、茨城工場から秋田新工場への⼀部生産移管や機能転換への再整備、日本国内の人員最適化に向けた希望退職者募集などを実施しました。
2026年3月期は、短期を含む売上増と収益力回復に重点を置き、ビジネス拡大と経営基盤強化の各施策に注力します。モビリティ市場におけるビジネス拡大は、パワートレイン分野で欧米規格対応製品の拡販を強化しつつ三次元可動BtoBコネクタ「Z-Move」のラインナップ拡充を進めます。インフォテインメント分野では、統合ECU向けに次世代高速対応製品、スケーラブルコネクタを投入し、センサー分野では、ケル株式会社との共同開発製品の早期量産化を目指します。
インダストリアル市場におけるビジネス拡大は、エネルギーマネジメント分野の売上拡大、並びにAIや半導体製造装置、通信分野を開拓しつつ、2025年2月に販売代理店契約を締結したArrow Electronics社との連携を通じて、営業活動の強化を図ります。そして各市場とも中国の顧客拡大に向けて、同国内で製造・販売・技術の⼀貫体制を拡充していく方針です。
経営基盤強化の取り組みでは、秋田新工場の立ち上げ加速による⽣産性向上・体制整備と並行して、本社機能を見直し、間接部門の生産効率を高めます。また業務の標準化とサプライチェーンの可視化に新ERPシステムを活用し、間接コストの削減につなげるとともに、設備投資の効率向上や固定費圧縮を進めていきます。
2026年3月期の連結業績は、売上高550億円(2025年3月期比2.4%減)、営業利益55億円(同3.6%増)、経常利益54億円(同1.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益39億円(同46.5%増)を見込んでいます。自動車生産台数の減少傾向を踏まえて減収想定ですが、為替影響を除くと1.6%の増収となります。営業利益は、秋田新工場の稼働開始に伴う固定費の増加と、各種コストの上昇の影響を、構造改革効果(約8.1億円)と原価低減施策で抑制し、増益を確保する見通しです。
なお米国の関税政策によるリスクについては、今のところ北米の自動車販売台数減少による10億円を含めてグローバルの自動車販売台数減少で約25億円のマイナス影響を予測していますが、目下状況が刻々と変化しているため、上記の業績予想にはこれを反映しておりません。今後、米国本土向けの生産地を税制上の最適地へ移管することも視野に入れ、迅速・的確に対応していきます。
鈴木:
課題克服と成長軌道への回帰に向けた足場固めを成果につなげ、さらなる飛躍を目指します。
今回の期末配当は、「配当性向40%以上」または「DOE5%」を目標とする安定配当を維持し、自己株式の取得とともに拡充を目指す株主還元方針に則り、予定通り1株当たり100円(前期比10円増配)を実施しました。自己株式については、2025年3月期中に総数209万株・総額58億円を取得しました。2026年3月期の期末配当は、1株当たり110円を予定しています。
当社は、現在推進中の中期経営計画(2025年3月期~2027年3月期)を、課題克服と成長軌道への回帰に向けた足場固めの3年間と位置付けています。計画2年目は、ここに述べましたビジネス拡大と経営基盤強化の取り組みを着実に遂行し、収益力を高めてまいります。
株主の皆様におかれましては、引き続き当社事業へのご支援を賜りますようお願い申し上げます。